「……ありがとうございます」
「とんでもございません。姫。ああ、そうだ」
そういって燐さんが鞄から取り出したのは――。
「見てこれ」
(こ、これは……!)
最初は、男女が写っているように見えた。
でもすぐにそれが愁さんと燐さんだってことに気づいた。
「撮ったんですか!」
(噂の、プリクラじゃないですか……!)
「あの、わたし。これ。ずっと憧れで。……いいなあ」
「そうなのー? そんなこと言ったら明日にでも幻のやつ撮りに向かうんじゃない? キミが満足するまで。なんならゲーセンにある台ぜんぶコンプリートするまで」
「え!?」
「楽しいだろうね。幻と、あの箱の中で、寄り添ってピース」
「……!」
「頭なでなでしてもらう? うしろからハグ? 定番だよね。それとも、チュープリ撮っちゃう?」
チュープリって
チュープリって、あの、チュウですか!?
「いえ、ピースで、大丈夫です」
「幻のプリクラ仕様の顔面を想像したら爆笑不可避だよユウちゃん」
既に笑っている燐さん。
「すごく……顔、変わるんですね」
「ヤバイでしょ、その愁。乙女でしょ」
「……かわいいです」
「正直に気持ち悪いって言ってもバチあたらないよ」
「そんなことないですよ?」
「そのプリクラ見てたらどんな嫌なことも忘れられそうだよ。悩んだり怒ったりするのがバカバカしくなりそう」
「ふふ。それじゃあ、これは、燐さんの宝物ですね」


