ビューラーというものでまつ毛を挟んでくるんと巻いて、そこにマスカラというアイテムを塗ってもらった。


「目力がアップしました!」

「だよねー。あ、カラコン入れてみる? そうすればユウちゃんの“お人形さん感”が更に増すねぇ」

「……の、呪いの人形?」

「ちがうちがうー。思わず抱きしめたくなるような、かわいい人形だよ」


続いて

アイラインというペンで目の縁を囲まれる。


目尻を丁寧に仕上げているみたい。


「こっ……これは」

「どう?」

「わたし、どちらかというとタレ目なのに」

「ビックリした?」

「はい」


猫の目みたいになった。

つまり、少しつり気味の。


「おお……。すげぇ」


近くに座っていた愁さんが、手元の参考書そっちのけで、わたしが変えられていく様子を眺めている。


「恐れ入ったー?」

「ああ。つか、やっぱ燐は器用だな。俺にはとても真似できねーわ」

「ユウちゃんは普段まったくメイクしないから、これだけでも変化が大きいよね」

「それはそれでありだな」

「あれー、愁くんは、メイク薄めな女の子が好きなんじゃなかったの〜?」

「……ユウならどっちでも可愛い」

「やだなー。鼻の下のばして。っていうかオッサンは女子トークに入ってこないで」

「だれがオッサンじゃ。なにが女子トークじゃ。だからここは俺の家……」

「うーるーさーいー」

「クソが」


そう言うと、愁さんは呆れたように部屋に戻って行った。


やっぱり喧嘩はなくならないんだなあ?


愁さん、休校だからって休んでいられないみたい。


これから夜まで勉強するんだろうな。