「目、閉じて。そう。そのままね」

「……燐さん。もう、いいです?」

「まだあけちゃダメ」

「あとどれくらいですか」


翌朝は台風が接近していて、お仕事がお休みになった。


「一時間、くらいかな」

「マスカラってそんなに乾くのに時間かかるんですか!?」

「うそだよーん」

「……へ?」

「もう、とっくに乾いてるんだけどね。ユウちゃんが目を閉じている間にイタズラしたいだけ〜」

「なっ……」

「メイク中の女の子って。この上なく無防備だよね」


慌てて目をあけると、至近距離に燐さんの顔が。


「近っ……!」

「うん。かわいーね」

「……ほんとですか?」

「うん。だから、チュウでもしとこっか」

「だから、じゃないですよ」


ただいま、燐さんと

『どれだけ変われるか試してみよう』ということで、絶賛メイク中なわけでして。


「おい燐テメェ、幻のいないすきにユウに手ぇ出すんじゃねーぞ」


幻さんはお昼までにお仕事を切り上げると言っていた。

愁さんは休校になったから家にいる。


「あーあ。口うるさいメガネがいなかったら、ユウちゃんと二人きりだったのな」

「いやここ俺の家ってこと忘れるなよ……?」

「まあ、愁いてもいなくても。どっちでもいいけどね。気にせず続けようね、ユウちゃん♡」

「メイクだぞ。続けるのは、あくまでメイクだからな」


やっぱり燐さんの冗談は減らないし、イタズラっぽいこと言って愁さんをイラっとさせているけれど。

出会ったばかりの頃に比べ、すっかり仲良しって感じだ。