わからない。
わかりたい。
「キミは両親が亡くなったからボクの気持ちがわかるとか。似てるとか考えてるかもしれないけどさ。この世に存在してる時点でキミ自身は生まれてきてるからね。誕生日わかるでしょ。名前も愛する両親が、気持ちこめてつけたんでしょ」
「燐さん、」
「埋められないよ。そう簡単に。ゼロ以下のマイナスからのスタートで、幸せになるどころか普通の道を選んで生きることもできていない。生まれてないんだから」
「燐、さん……」
「選べないよ。選びたくないよ。なんで不幸なんです、助けてくださいって世間にアピールしなきゃならないの。恥晒さなきゃならないの。どうしてボクはみんなが当たり前のように持ってるものを手に入れるのに苦労しなきゃならないの。赤の他人から同情されて生き続けなきゃならないの。屈辱だよ」
「……ます」
「なに。聞こえない」
「燐さんは、存在してます。わたしの目の前に、ちゃんと、いるじゃないですかっ……!」
――触れられるじゃないですか。
「燐さんがいなきゃ。わたしは、ここには、いません。今、この世にいたかも……わかりません」
少し間をあけたあと、燐さんがつぶやいた。
「自殺してたかもってこと?」
イジメられて。
クラスメイトから、売られて。
あの夜、燐さんに救われていなかったら。
「……燐さんほど強くないですから、わたし」


