「……言ってくれるねぇ」
「わたし、今から、とっても酷いこと言います」
「どうぞ」
言いたくないけど、言います。
「誰もが愛されて生まれてくると、そう望みたいけど……100%は叶いません」
叶っていたら、燐さんは、こんなに苦しんでいない。
「もちろんそうだね。妥協して出産する人はいるだろうから」
本当に?
燐さんは、望まれずに、生まれたの?
そう、燐さんが、勘違いしてるんじゃなくて?
そんな疑問が次々と浮かんでは
わたしの頭の中で、消えていく。
望みを持つことは、ときに残酷だ。
知らないということは、残酷だ。
「可愛い我が子のこと。なにかが原因で、ある日突然、愛せなくなる人がいるかもしれません」
「そうでなきゃ、虐待がこんなに問題視されてないよねー」
でも。
それでも。
「親から愛されなくても。親を失っても。その子たちは不幸になるとは、決まってないんです」
わたしは、決めたんだ。
“幸せになる”と。
そう思わせてくれたのは、
家族だったり。
幻さんだったり。
そういう人がいてくれたおかげで。
だから、わたしも燐さんに
そう思ってもらいたい。
「幸せになる道を選んでいいんです」


