「永久……就職」
なんて素敵な四文字熟語。
「まあ。ユウちゃんと幻が、三年後もラブラブなのか疑わしいけど」
「え!?」
「マジメなハナシをすると、ボクは、若くても欠陥だらけだからねぇ。学歴も資格もなければ、住所不特定で身分証明書もない」
「そうなんですか?」
「ああ、ニセモノなら持ってるよ。見る?」
「ええっ……それ、違法なんじゃ」
「当たり前のこと聞かないでよ」
「そんなの……どうやって」
「ナイショ。ただ、一つだけ教えてあげる。お金があれば、そんなものも買えちゃう。良い子は真似しないでね」
「…………」
「まあ、もうそれ使って遊ぶのは控えるけどさ」
使えば周りの人たちに
つまり――黒梦に迷惑がかかるから?
家を出てきた理由も、そういうことなのかな。
「燐さんって。本名じゃないんですか?」
「ちがうよ」
「上の名前も」
「成田は――、」
燐さんがどこか上の空で話を続ける。
「あると便利でしょ。名字」
「え……」
「それだけ」
「でも、」
「健康保険くらいは入っておきたい気もするなぁ。大きな病気でなくても怪我なんてして運ばれれば大金が請求されるよね。やっば」
ねえ、燐さん。
わたしは自分が不幸だと思ったことがあるよ。
熱を出したくらいじゃ病院に連れて行ってもらえなかったし。
ご飯抜きって言われたときだって。
なんで、こんな目にあうんだろうって。
だけど。
燐さんは、
「無戸籍って知ってる?」
なんともない顔して、
辛い過去の話をしちゃうんだ。


