「かんせーい。鏡見て」
「鏡……?」
「姿見だよ。ここに立って」
縦長の鏡の前に連れて行かれる。
(わあ……!)
編み込みヘアだ。すごい。
これって、難しいよね!?
幻さんに、見せたい……。
片付け終わったあとで見てもらおう。
「いつも着ない服や、いつもと髪型を変えるだけでこんなに雰囲気が変わるんだ。メイクしたら安心して街を歩けるね。幻とのデートだって行けちゃうね」
「デートっ……」
「頑張って覚えてね、整形メイク」
「……“整形メイク”ですか?」
「怖がらなくていいよー。メス入れるわけじゃないから」
「どんなことするんですか」
「普通にメイクだよ。その人なりの良さを引き立てるようなメイクというよりは。完全に作り上げていくイメージかな」
つまり。
手術なしに、化粧品だけで自分以外の別人になるのか。
「ユウちゃんは――パッチリ二重だし、まつ毛長いし、肌も綺麗だからいじり甲斐ないね」
「……あまり変身できないってことですか?」
「そんなことないよ。ちょっとしたことで印象なんて大きく変わる。例えばこの人」
燐さんが、携帯を取り出す。
「送ったよ」
言われて自分の携帯を取り出す。
(幻さんに買ってもらったものだ)
燐さんにメッセージアプリを入れてもらい、簡単に画像を受け取れるようにしてもらったのだが。
画面をタップすると、燐さんから写真が一枚届いていた。
「もう何枚か送るね」
次々と届いたのは、どれも女性の写真。
共通しているのは全員マスクをしているということだけのように見えるが……。
「どれが同じ人かわかる?」
「え……」
この中に同一人物がいるの?


