「離さない」
「まさかオレに本気で惚れちゃった? キスくらいで。チョロすぎ」
「そんなわけあるか」
なんなの、これ。
気持ち悪い。
なんで自分のハナシこんなに愁にしなきゃならないの。
なに話してるの。
オレらしくない。
愁も。
オレも。
みんな、気持ちが悪い。
「エミリさんて、どんな人」
「なに。愁、狙っちゃうの?」
「ちげーよ。お前ことが知りたいからだ」
「……オレの?」
「お前、金が好きなんだろ。すべてなんだろ。それにしては彼女は“普通”すぎる。そりゃ魅力的なひとに違いないんだろうが。お前が惹かれてるのは、どこなんだろうと思ってな。俺が知りたいのは燐の気持ちだ」
愁って、人のために
こんなに心のうちをベラベラと話すやつだっけ。
「さっき言ってた“余裕ない”ってのが関係してんのか?」
オレの心を探る愁は
ただ、不器用で。
「やっぱりアレか。それは……俺が聞いちゃマズい話か」
ズカズカと踏み込んでくるようで、慎重で。


