――エミリちゃんには子供がいる。
一人で育ててる。
誰にも頼ることなく。
だから爪なんて短く切りそろえてさ、ネイルだってしていないんだ。
夜泣きで不規則な生活も続けばメイクのノリが悪くなるんだって。
あんな綺麗で、コミュ力だってある。
いくらでもオトコに頼れるだろうに。
……利用できるだろうに。
エミリちゃんは、いつだって母親の顔してる。
【ああ、この子は息子だよ】
エミリちゃんのスマホのホーム画面には、子供の写真が設定されていた。
「すごいわんぱく」
そういって笑顔を見せたエミリちゃんを見て。
オレは。
――あのひとの心が欲しいと思った。
休みの日は公園に行ってるんだって。
どれだけHPすり減ってても
寝顔見ると元気チャージできるんだって。
怒鳴りたくなることもあるらしい。
疲れてる中、作ったごはんひっくり返されたときとか。
そのときは腹が立つことも
思い出すと、案外どれも笑えてきて
なによりも大切な時間なんだって。
そんな半分愚痴みたいなエミリちゃんの話を聞きにあの店に通うようになった。
「ああ、オレ。もしかしたらエミリちゃんの子供になりたいのかも」
「は?」
目を見開いてオレを見下ろす愁を見て、ハッとする。
「子供って、そんな年かよ。あのひと」
なにを口走ってるんだか。
「いつまで握ってる気なの。……離してよ」


