なんでまだオレの手を握ってるの。
なんでそんな、兄貴ヅラしてるの。
言ったよね。
オレは、なにもかも
めちゃくちゃにしてしまいたいんだよ?
「思い出したんだ。テメェのハナシは嘘ばっかだってことを」
――!
「あやうく騙されかけた」
「なにが」
「だいたい全部。エミリさん。ほんとは手なんて出してないんじゃないか」
「……その根拠は」
「一見親しげで距離感があった。心の探り合いで会話が成立していた。それをどういうわけか、お互いが楽しんでいるようにさえ見えたんだ。あれはただの身体だけの関係には思えない」
バッカじゃないの。
「こんなときにだけ嗅覚働かせないでよ、飼い犬」
「ってことは、当たりか?」
単純バカのクセに。
「いつも鈍くて使い物にならないのに」
「うるせぇ飼い猫。テメェは本当に大嘘つきだな」
騙されておけばいいのに。
キミの中でのオレなんて、最悪のままでいいのに。
「嬉しそうだったけどな」
「なにが」
「エミリさんと話してるときのお前」
――…嬉しいよ。
「“いくらでもある”んだろ? 化粧品が買える店は、ゴロゴロと。そんな中でお前があの店を選んで貢献してる理由。それは、彼女のためだ」


