総長さんが甘やかしてくる②(※イラストあり)



なんでまだオレの手を握ってるの。

なんでそんな、兄貴ヅラしてるの。


言ったよね。


オレは、なにもかも

めちゃくちゃにしてしまいたいんだよ?


「思い出したんだ。テメェのハナシは嘘ばっかだってことを」


――!


「あやうく騙されかけた」

「なにが」

「だいたい全部。エミリさん。ほんとは手なんて出してないんじゃないか」

「……その根拠は」

「一見親しげで距離感があった。心の探り合いで会話が成立していた。それをどういうわけか、お互いが楽しんでいるようにさえ見えたんだ。あれはただの身体だけの関係には思えない」


バッカじゃないの。


「こんなときにだけ嗅覚働かせないでよ、飼い犬」

「ってことは、当たりか?」


単純バカのクセに。


「いつも鈍くて使い物にならないのに」

「うるせぇ飼い猫。テメェは本当に大嘘つきだな」


騙されておけばいいのに。

キミの中でのオレなんて、最悪のままでいいのに。


「嬉しそうだったけどな」

「なにが」

「エミリさんと話してるときのお前」


――…嬉しいよ。


「“いくらでもある”んだろ? 化粧品が買える店は、ゴロゴロと。そんな中でお前があの店を選んで貢献してる理由。それは、彼女のためだ」