「……そんな呼び止め方じゃ女の子は引くよ」
「女子を落としたいわけじゃない。俺の話し相手はお前だ、燐」
オレの中身見たあとで
なんでまっすぐにオレのこと見てくるの。
どうせ汚いんでしょ。
キミみたいな人間から見た、オレなんて。
「さっきから引っかかってたんだけどよ。“ドブネズミ”ってのは。テメェのことか?」
「……!」
「だとしたら。こんな歌があるの知ってるか、燐。『ドブネズミみたいに美しくなりたい』」
「なにそれ」
「知らねーか。俺らの親世代でも知らないかもしれない懐歌の歌い出しだ」
「なんでそんなの知ってんの」
「やりたいことさせてもらえなかったせいかな。一人暮らしを始めてから触れたことのないものに色々と触れる機会が増えた。生まれて初めて見たバラエティ番組に笑えなかった。なにが面白いか理解できなかった。それが高一の頃だ。サザエさんだって見たことあるぞ。……やっぱりあんまし面白さはわかんねーが。音楽番組は割と好きかもな。年代関係なしに名曲はいつの時代も流れる」
「ほんと気持ち悪い」
「その、とりあえず気持ち悪いっていうのやめろ」
「とりあえずじゃなくて。キミが心底気持ち悪い」


