皇帝が出てきたことにより、戦っていたヴラフォス兵は戸惑いを見せる。

しかし、モデストは諦めなかった。

ユリウスたちが切り開いた道の奥に、メアリの姿を見つけ、距離を確認すると見張り塔に待機させていた腹心の弓兵らへ視線をやる。

その動きを見ていたユリウスは、気づいて急ぎ馬を反転。


「メアリ! 弓だ!」

「放て!!」


ユリウスが駆けるのと、二十名ほどの弓兵が矢を番えたのは同時。

メアリを護るルーカスの隊も迎撃の体制に入り矢を弾いていく。


「セオ!! 見張り塔だ!!」


ユリウスが指示すると、セオは素早い動きで見張り塔の弓兵に矢を放った。

他の隊にいる弓を扱う騎士らも応戦する中、ルシアンは見張り塔へ制止の声を上げるが従わず、弓兵は次々と矢を放ってメアリを狙う。

そして、ついに一本の矢が第二部隊の防衛をすり抜け、メアリの胸を貫く……はずだったが。


「っく……」


その矢は、駆けつけたユリウスの背を射抜いて、月の光を受け、青白く輝いた。