「よし、できた!」


リボンを結び終えたメアリは、疲労を和らげるよう両腕を上げて伸びをする。

テーブルに並ぶのは、ラベンダーのポプリだ。

枕元に置いて安眠を促そうと考え、ロッテに布などの材料をお願いしたのだが、様々な色に染められた布を見たメアリは、せっかくなのでユリウスたちにも作ることにした。

かなり余分に作ったので、皇子二人の他にロッテとあとは誰にお裾分けをしようかと悩むも決まらず。

とりあえずユリウスやルシアンに持って行く為、ロッテに案内を頼んだメアリだったが……。


「うん、やっぱりこうなった」


お約束の展開に、笑いが漏れる。

またしても迷子になった原因は、案内をしてくれていたロッテに別のメイドからヘルプの声がかかったからだ。

ロッテは仕事に戻らねばならず、ユリウスとルシアンの部屋への行き方を説明してもらったメアリ。

どちらかひとり分ならまだ良かったのだが、二人分を説明されてしまった為、頭の中でこんがらがり迷子となった。

しかし幸いにも、今回はすぐに人を見つけることができ、壁沿いに姿勢良く立つ衛兵に話しかけようと口を開きかけたちょうどその時、扉が開いたかと思うと低い呻き声が聞こえ、メアリは眉をひそめた。

部屋から出てきたのはメイド長のマグダだ。