ユリウスの先導によりようやく洞窟から出たメアリは、手をかざし眩しさに目を細める。

薄暗い洞内では時間の感覚がよくわからなかったが、太陽はてっぺんを過ぎて西へと傾き始めていた。


「もう少し歩くとコリーナという小さな村がある。今日はそこで休もう」


荷物を肩にかけ直したユリウスは、洞内の池で補充した水を飲むと時間が惜しいとばかりに歩き出す。

メアリは疲労で重くなった足を必死に動かし、かつてティオ族の村があったフォレスタット王国の大地を初めて踏みしめた。


(フォレスタットのチェリノ村、か)


王妃マリアの生まれはアクアルーナだとイアンから聞いている。

母はティオ族の力についてどう考えていたのか、もうなくなってしまった一族の故郷を訪れてみたりはしたのか。

絵画の中で微笑む姿しか知らない母に思いを馳せ、ユリウスの後ろをついて歩みを進める。

ユリウスの予想では、そろそろ捜索の令が行き渡りメアリを探し始める頃だろうとのことで、街道を避けつつコリーナ村を目指した。