「全軍に、これより先は警戒して進むよう指示を出しておきます。あなたはルーカスやユリウスから離れず行動を」

「わかりました」


セリニで何をするのかも気になったが、今は一刻を争う。

撤退に関してもイアンの話す通りであり、メアリの中でもアクアルーナに戻るという選択肢はなかった。

危険が伴うのは百も承知。

怖くないわけではないが、逃げることはしない。

視れたのだ。

ならば切り開けると、メアリは気持ちを強く持ち、胸いっぱいに息を吸い込んで吐き出す。

その様子を見ていたイアンが、メアリの気持ちを汲み取るかのように頷いた。


「メアリ王女。どうぞ、ご無事で」

「イアン様もお気をつけて」

「ありがとう」


笑みを浮かべ、イアンが数人の兵を連れて宿を出る。

それを見送るメアリも緊張した面持ちで、迎えにきたユリウスと共に朝日に照らされた町へと踏み出した。