「あ……地震だ」
後ろの方に座っていた女子のうちの一人が、
大きな声でそう言った。
しばらくしてから揺れがあった。
「大きいな」
と、先生が言う。
揺れは大きかった。
ユラユラとした大胆な横揺れで、
徐々に振動は強くなった。
かなり大きい。
そしていつも以上に長い。
みんなが騒がしくなる。
そしてだんだん焦り出す。
「落ち着きましょう! 冷静さを欠いてはいけません」
先生はそう言うけれど倫太郎は至って冷静だった。
この程度の揺れでは、人は死なない。
そういう人生を斜に構えたような考え方をする性格であった。
もちろんそれは良い側面も悪い側面もある。
良い面はちょっとしたこと……例えば今のように大きな地震くらいでは取り乱したりしないこと。
悪い面は、人間関係である。
人と大きく価値観が違う倫太郎は、
同じ教室にいても別の世界を生きている。
別の世界に生きているのだということをクラスのみんなも分かっている。
だから、お互い、馴れ合いなどしない。
クラスがわーわー、騒いでいるうちに揺れは収まった。
倫太郎たちは、震度でいうと5弱くらいだったかなと体感していた。かなり大きいほうである。
この後も余震があるかも知れないから、
気を付けるようにという事で、学年集会が再開した。
「お金を取る! 脅す! 叩く! これはいじめジャナインだヨ! 立派な犯罪ナンだ」
依然として先生の口調がヘンテコに聞こえていた。
人の心理状態というものを見透かしてしまう倫太郎にとって先生たちの言葉は、ヘンテコな口調というより、むしろ機械か発するような心のこもっていない声に聞こえた。
「見て見ぬフリなんかしていませんよ。と、言えるだけの免罪符にしている」
倫太郎はまた独り言を囁いてしまった。
マズイ聞かれたかな、と彼は一瞬焦ったけれども、
先生たちは別に気にしていないようだったので、少し安心する。
「先生の耳が正しければ、
先月はこんな事がアッタソウだ!
仲良し学級にいる女の子の事をからかって、
ムシの死骸を喰わせようとした男ドモがイタそうだ!
正直シンケイを疑うよ!」
『仲良し学級』というワードを聞いたから、
倫太郎の心はハッとした。


