何も、言葉が出て来ない。 「波留、多…?」 弱弱しく問いかけるけど反応はないままで。 私は身を預けるように目を閉じた。 「行くなよ」 「え」 「俺をもう、一人にするな」 その声はすがるような涙声。 さっきの了雅の涙声とも、隆騎のどんな言葉よりも 胸に重く響いて離れない。 「うん、大丈夫だよ」 私は目を閉じながら、波留多の頭を撫でることしかできなかった。