そう言う桃李の後ろには、ストレートロングヘアの清純派っぽい女子生徒が一人いる。

桃李の直属の上司である、生徒会の庶務、二年の星さんだ。

「ミスターおかえりー」なんて、こっちに手を振っている。



「じゃあそよみセンパイ、お先に失礼します…」

「桃りんもお疲れー。私はきいちゃんの仕事終わったら一緒に帰るー」



「じゃあねー!」と、星さんは手を振って中へと戻っていった。



「…センパイと内緒のお話?」

「あ、うん」

「…何の話」

「恋ばな」

「へぇー。星さんの?」

「うん」

「…帰るか」

「うん」



そうして、二人で正面玄関口を出たが。

同時に冷たい風が吹き付けた。



「わわわわ…寒い」



冷たい風にキュッと縮こまる桃李だが。

黙ってその右手を取って繋ぐ。


「行こう」

「あ…はい」


…最近、ようやく普通に自然に手を繋げるようになった。

それまでは意気込んで、緊張して力んで、不自然なの何なの。

恋人繋ぎ?まだまだだな…。




「夏輝、明日からいないの?」

「うん。合宿で伊達に一泊。明日5時学校集合で帰りは明後日の夜」

「大変だね」

「うん」



桃李は、俺と話してる時、吃らなくなった。

吃りはパニックになった時ぐらい。

これは…俺のことを恐がらなくなってきたということだよな。

…いや、彼氏相手に恐がってもらっても困る。



でも、その変化は嬉しい。

どんな時も、俺が桃李にとっての一番でいたいから。



俺の小言や雷は、相変わらず…。

いや、ちょっとは減ってるとは思うけど。

ここは桃李に評価してもらわねばわからないな。




「…お。そうだ。さっき、イオンで星月に会ったぞ」

「せづちゃん?元気だった?…あ、私も先月会ったんだった。夏輝のサッカーの試合のとき」

「…は?そうだったの?…何で言わないんだよ!」

「いや、別にいいかなと思って…」

「よくない!…ったくおまえは、そういう報告は大事なんだぞ!」

「あ、あ、あ…すみません」

ホント、俺も相変わらずだな…まだまだだ。





俺達はまだまだ。人間としてもまだ子供だし。

だから、こうして二人で成長して変化していけるのは、プラスなことだ。

これからも、まだまだ。



「…あ、それで。星月に会った後、思いもかけない人に会ったぞ」

「え?誰?」




嘆いて、めげて。

この先、不安だらけになるかもしれない。

でも、二人でいれば。

そんな人生悪くはないなと思える…はず。




「それはな?…」




さあ…まだまだ、行こうか。










王子様とブーランジェール eNd
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