北国の学校の夏休みは短い。
お盆がすぎ、8月が終わる前には二学期が始まる。
夏休みも気がつけば、残りあと一週間。
なのに、桃李はまだ帰って来ない…。
理人はもちろん、母である苺さんに聞いても、友人である秋緒に聞いても、帰国する日がよくわからない。
本当に帰って来んの?
…ちなみに、秋緒は、桃李のフランス行きを知っていたらしい。
学祭に遊びに行った時、花火大会に誘ったら、そのような理由で断られたとのことだ。
って、花火大会、おまえも?
双子揃って同じことしようとする?
双子、嫌だわ…。
あと一週間、何すっかな。
課題もとっくに終わってるし。
大河原さんに飲みに誘われたけど。
未成年だからと丁重にお断りしてやったら、ダサいとの一言を投げ掛けられた。
絶対女いる。冗談じゃねえ。
警察に捕まってしまえ。もう。
あー…眠い。
桃李に、会いてえな…。
なんだかんだ、もう三週間も留守にしてるぞ。
こんなに会えないなんて、初めてかもしれない。
長期休暇中でも、ご近所なもんだからそこらへん歩いていたら出くわしていたのに。
会えないなんて…。
「たっだいまー」
玄関のドアがバタンと閉まる音がした。
物音に反応して目が覚めて、思わず体を起こす。
体を起こしたため、腹に乗っていたピンクはゴロゴロと床に転げ落ち、鳴き声をあげていた。
パタパタとスリッパで歩く音がしたと思ったら、リビングのドアがガバッと開く。
「あらっ。涼しい」
そこには、帰宅した母親の姿が。
帰ってくるなり、ソファーにいる俺に気が付く。
「…あら。家にいたのあんた」
「あれ?今日早くね?」
「今日は半ドン。明日からお盆休みで三連休なんだー」
連休を前に嬉しそうにする母親の帰りに、ピンクも尻尾を振って駆け寄る。
「ピンクただいまー。今日は暑いわよ。外に出たら死んじゃうわよー?」
そう言って、寄ってくるピンクを抱き上げている。
「夏輝、お昼は?」
「まだ食べてない…」
「え?もう2時よ?よく死ななかったわね」
「寝てた。何か作って」
「じゃあそうめんでも湯がこうかしら」
そう言って、ピンクを抱いたままキッチンへ赴いている。
明日から三連休で浮かれているのか、鼻唄が聞こえていた。