中に入ると一転して暗くて。
体育館の照明は、ステージのみを照らしていた。
体育館内に席はなくオールスタンディングで、生徒はステージを取り囲むように、集まっている。
隅に座っているヤツもいれば、後ろの方で寝転がってるヤツもいて。
何だか自由だな。
「もう少し前に行くか?」
「いえ、ここで大丈夫です。実は夜に会議あるんで、桃李のステージ見たらすぐ戻らなきゃいけなくて」
「へぇ。忙しくしてるんだな」
「はい。毎日楽しいです。でもホントは最後まで見ていたいんですけどね」
「じゃあ今度DVD貸してやるよ。前夜祭の様子、放送局が録画してるらしいから」
「ホントですか?嬉しいー」
しかし。
入口から少し離れたところに先生二人とガチバカ美人と四人。
並んで立っているって…どういう状況?
先生と並んでいるとか、端から見たら何の罰かわかりづらい罰ゲームだ。
でも、ここからさりげなく見てる方がいいか。
そんな感じで、さりげなくご一緒させてもらう。
「…お、始まるな」
ステージにパラパラと人が出てきた。
チアガール姿のクラスメイトたちが。
桃李も…いる。
今、気付いたけど、柳川、桃李と、他のバックで踊る女子たち、衣装の色が違う。
バックの女子たちは同じデザインの黄色い衣装だ。
二人と松嶋、理人だけがピンクなのか。
前列の方々だけ衣装の色が違う。なるほど。
そして、合わせて二曲踊るらしい。
理人は最初は出ておらず、二曲目の途中から乱入するカタチで出ると聞いている。
理人がどんなダンスするのかも楽しみだわ。
振りはキレキレですか?笑える…!
ヤバい。楽しみ、まだあった。
「桃李、頑張って」
超美人が、ふと呟いた。
視線は奥のステージで、胸元にある右手は拳になっている。
…なぜ、こんなにも。
この人は桃李にこんなにも親身になっているのか。
『アーユーレディー?!1年3組!』
松嶋の声だ。
マイクを通して、体育館中に響き渡っている。
同時に、大音響であの音楽がかかり始めた。
さあ来た。来たぞ。
始まったぞ。
桃李たち女子の他、変態二名の参加するダンスが。
ステージ上のダンサーが静止している中。
女装チアガールという変態の格好をした松嶋が、飛び込むように登場。
ステージの真ん中で、一人踊り始めた。
ぶっ…こいつも、やたら動きが機敏だ。
キレキレなんですけど!
実はツッコミどころ満載だ。