「杉久保さーん」

「…ん?蓑島くん?何?」



ホームルーム、1時限目が終わった中休みに。

斜め後ろから、呼び掛けられる。

振り向くと、あのミスター蓑島くんだった。



「杉久保さん、そういやサッカー部ってインターハイどうだったの?」



興味津々に、笑顔で聞いてくる。

あの、殺傷能力抜群のスマイルで。



ち、ちょっと…。

ドキドキさせないでよ…。



気を取り直して、質問に答える。



「二回戦敗退だよ。やっぱ全国の壁厚いね」

「へぇー。一勝したんだ。すごいじゃん。見応えあったしょ」

「見に行ってないよ。一年生はお留守番」

「え?そうなの?だって、お隣のクラスの水口くん、スタメンで活躍したって聞いたけど?」



その名前が出てきたことに、またドキッとする。

斗弥子に引き続き、この人まで。



「…一年生は瞳真だけ遠征メンバーに選ばれたの。1年マネの私と他の1年部員は残って地道に練習してたよ…」

「へぇー」

ホントは行きたかった…。

全国のレベルがどんなものか、この目で見たかったし。

なんせ、瞳真が試合に出てるところ、見たかった…。




「…蓑島くんこそ。野球部は?」

「夏休み中は練習試合だらけ。もう少しで秋の大会あるしねー」



蓑島くんは、野球部。

中学では部活ではなく、クラブチームで硬式野球をやっていたという。

私も、昨年までは女子サッカーのクラブチームでプレイしていた。

お互いクラブチーム繋がりで、それなりに話をするようになる。

クラブチーム事情とかで、盛り上がってしまった。

お母さんがたの勢い半端ないとか、お母さん同士でモメてるとか、お金かかるとか…。