章太が消えると、依奈の意識も完全に回復した。依奈はゆっくりと立ち上がり、先程章太がいた所を手を差し伸べるが、何も引っかからない。

依奈は章太の表情を思い返した。敵意、殺意のような類ではないのは確かだったが、何か思い残しているよう、そしてそれが嬉しくもあり悲しくもあるような感じ。
依奈にはその表情が何を意味しているのか、分からなかった。


依奈は倒れている静華の肩を揺らした。


「静華?聞こえる?大丈夫静華?」


すると、静華の意識も徐々に戻ってきて、ゆっくりと起き上がる。頭痛がするのか、頭を片手で抑えながらも辛そうにしていた。


「大丈夫静華?」


「えぇ....一体何が...あ、そういうことね...」


「どういうこと?」


「終わったのよ....あなたにはもうオーラがない。何故だか私には分からないけれど、成仏したようね。」


依奈は先程の光景を思い出した。善子が空へ導かれていく、あの綺麗な姿を。
依奈は天井を見上げ、善子の顔を思い出す。

小さい頃からお世話になって、可愛がってもらっていた。あの優しくて綺麗で子供想いの善子を。


「終わったんだ...本当に....ところで静華。章ちゃんの」


「えぇ終わったわね。"親子一緒に成仏できて"二人とも報われる形になってよかったわ。」