ふと瞼が少し開いた。意識が少しだけ回復した。薄目でしかも視界はぼんやりとして、ハッキリとは見えないが、シルエット程度には見えた。
目の前では二人が対立して話をしていた。
髪が長くて少し背の高いその人物は、長い髪を揺らしながらもう一人の、背の低めの人物に何かを訴えていた。
背の低めの人物は首を横に振り、何かを語る。それを聞き、背の高い方は髪を荒々しく振りながら必死に首を横に振る。
そこで背の低い方は背の高い方を抱き締めた。
胸の中で言葉を交わし、背の高い方も抱き締めた。何がなんなのか依奈には分からなかったが、どこか心が温かくなる感じがした。
背の高い方は身体から綺麗な光を発した。まるで蛍のような綺麗な光の玉となり、上の方へと導かれていく。そして、それにつれ依奈の意識も視界もハッキリとしていく。
光の玉となって消えていくのは善子だった。肌は先程のよう荒さはなく、生前の時のままだった。涙を零して笑顔で背の低い方から離れていく。
背の低い人物は依奈の方を見た。悲しそうだが、嬉しそう、なんとも言えないような表情をしている人物。
「.......章........ちゃん...」
肌は既に白くはなく、生前そのものの章太が立っていた。章太は依奈を見つめていると、霧のようにゆっくりとその場から消えていった。