享吾はカッターを章太に向けると、自分の首へ刺した。血が勢い良く飛び出て、享吾の服をあっという間に赤で染めあげ、享吾は段々と瞼が降りていった。


「くくく...お前は俺を殺せない。それは昔も今も....同じだったなぁ?俺は....二度と他人に従わねぇ...誰にも縛られねぇ....」


享吾はそう言い残すと、ゆっくりと崖の先へと姿を消した。生々しい音が山の中に響き渡る。

章太は享吾が落ちた先をただ見詰めていた。
依奈はそんな章太を見て、感じていた。

清都の時のような感じではない。悲しそうに虚しそうに、章太はただ見つめていた。
章太は享吾から目線を外し、依奈と目が合う。すると、章太は煙のようにフッと姿を消した。


章太が消えた後を依奈はしばらく見つめて、ハッする。依奈は残された自分の力を使い、静華の元へと這いずった。

静華の顔は丁度見えなく、依奈はそんな静華の顔が観るのが怖かった。ブルブルと震える手で静華の肩を掴み、そして自分の方へと倒した。

静華は額に赤黒い痣を残しているだけで、綺麗な顔で倒れていた。目を瞑ったままだが、鼻で息を吸っていた。


依奈はそんな静華に抱き着いた。


章太が自殺してから丁度一週間。章太のいじめ主犯の三人に対する復讐劇は三人の命によって幕を下ろした。