「うわー、ケーキのいい匂いがする。腹減ったー」

正午過ぎ。
海里のマンションに3番目に現れたのは、白いパーカーにカーキ色のカーゴパンツを合わせた理希だった。


「なんだ、理希さんも来たの?」


つまらなそうに言いながらも、春馬君が取り皿やフォークを人数分用意してくれる。

海里は午前中からどこかに出かけていて、まだ帰ってきていない。


「だいたい、イヴなのに暇してるってことは、彼女いないって言いふらしてるようなものでしょ」

「それを言うなら、春馬もな」

「私も今夜は一人寂しく過ごすかも。龍臣は椿の姫のことしか頭にないみたいだし」


エプロン姿のケイは憂鬱そうな表情をしたあと、冷蔵庫で寝かせておいたケーキを出し、カットし始める。もちろん、カットの前に写真を撮るのは忘れていない。

シンプルな苺のケーキだけど、ケイに手伝ってもらったこともあり、いつもよりふわふわのスポンジで。シルバーピンクのアラザンや板チョコを使った大人っぽいデコレーションに仕上がった。


「で、優希奈さん。結果はどうだったの?」

ケーキを食べながら、向かいに座った春馬君が身を乗り出すように聞いてくる。