「そんな事…!!」

結は最後までは口にしなかった。

「ま、俺はどっちでもいいんだけどさ。
TPOをわきまえないと、いらん醜聞で後で
辛い思いをするから、気をつけろ。
王子からナイトに乗り換えた、なんて
言われたら、お前、女子から総攻撃食らうぞ。」

そうかもしれない。

「……… 以後、気をつけます。」

結はそう言ったが、

「いえ、今のは、俺が勝手に触っただけで、
こいつは悪くありませんから。」

と俺は結のために訂正した。

「だな。
それは、分かってる。
でも、女は女を攻撃する生き物だから、
自分が可愛ければ、触らせる隙を作るな。
小川も伊藤を大切だと思うなら、人前で
不用意な事はするなよ。」

伊藤を大切だと思うなら?

春山さんは、俺の気持ちに気付いてる?

気付いてて、敢えて何も言わずに見守ってくれてるのか?

「はい。ありがとうございます。」

結がお礼を言い、

「すみませんでした。」

と俺は謝った。

春山さん…
食えない人だ。