「あれ、匠もう寝たの?」



ご飯を作り終えて、リビングに戻ると練習から帰ってきた匠がソファーの上で寝息をたてていた。



「ん.......」



あたしの声に反応してか、顔が歪むけど、起きるような素振りはない。



「疲れたのか.......」



風邪をひいては大変だと思い、部屋からかけるものをもってきて匠の体にかける。



「あ.......」



かけた時に見えた首元のネックレスに、さっきの竜崎さんの言葉が蘇る。



「忘れられない人、か」



そっと、匠の首元に触れる。
ひんやりと冷たいチェーンニ触れて、トップについている細い長方形の板を見る。



「.......SHION」



アルファベット5文字が刻まれたシルバーの板。
これが、竜崎さんの言っていたことなのだろうか。

でも、シオンという名前だとしても、女か男かはわからない。
ただ、これを毎日匠がつけていて、匠の名前ではないことだけはたしか。



「.......はぁ」



前途多難すぎる片思いに、ただただため息が出るばかり。