「柊!」



玄関で靴を履いていると聞こえてきた匠の声に顔をあげる。



「あ、匠。病院行くんだろ?」


「あぁ、夏実置いてくから部活見せてやってよ」



靴を履き終えたあたしの腕を引っ張って、柊くんの前へと連れていかれる。



「え?別に構わないけど.......?」



突然のことに、柊くんもキョトンとした顔をしてる。



「帰り、一緒に帰ってやって」


「おう、部活終わったら暗いしな。当然一緒に帰るよ」



ニコッと笑ってあたしを見る。



「あ、ありがとう.......」



ニコッと笑った柊くんの表情にドキドキしないわけがない。

匠は何を考えているのか、全然わからないけど。
柊くんのことを考えてるのがバレたら不機嫌になるくせに。
柊くんのことを話したら不機嫌になるくせに。

今度は、柊くんと一緒に帰れだなんて。
どんな風の吹き回しなのだろう。



「じゃ、夏実のことよろしくな」



ポンっとあたしの頭を叩いて、そのまま走って玄関を出ていく。