「あーもう!どうしたの!」



回は8回。
0-7でうちの高校が負けていた。
3年生のエースが怪我をしたうちの高校は、予選でピンチを切り抜けた、匠と柊くんバッテリー。



「匠の調子が悪いの?」



こころちゃんが首を傾げる。



「調子が悪いというか.......」



あれは、確実に匠じゃないと思う。
柊くんだ。
柊くんのリードが心ここにあらずなんだ。

柊くんの抜群のリードがあってこそ、匠の投球は輝く。
どうみても、今日の柊くんは心ここに在らずという感じ。



「あーどうしたんだよ。匠のやつ!」


「ほんとだよ、この前の予選はまぐれかよー」



みている生徒たちの口もだんだんと悪くなっていく。



「.......のに」


「ん?」



「頑張ってるのに.......」



どうして、匠が悪く言われなきゃならないの。

本当は、悪く言っているみんなに言ってやりたい。
でも、元々人付き合いが苦手なあたしにそんな勇気があるはずもなく。



「夏実.......」


「毎日遅くまで、頑張ってる匠を知ってるから.......」



ここで、あたしが勇気を出さなくてもいいのかな。