「.......っ!?」



目を覚ますと、バスが球場の前についたところだった。



「夏実?どうかした?」


「あ、ううん。大丈夫」



ぼーっとしているあたしに気づいて、こころちゃんがあたしの肩を揺らす。



「あたしって、あたしだよね?」


「へ?」



突然変なことを言い出したあたしに、こころちゃんが首を傾げる。



「いや、変な夢見ちゃって.......」


「夢?」


「自分が小さい頃の夢ってのはわかるんだけど、みんながあたしのことをしおんって読んでて.......匠に好かれたいからってそんな夢見るとか重症だよね」



いくら、あたしの名前が詩音さんになったところで、名前で匠が恋をするわけじゃないんだから。
そんな夢、見たって惨めになるだけなのに。



「なんか、腑に落ちない夢だね。今は特に」


「.......うん」



先生達について、関係者口から入っていくと、グラウンドではすでに練習が始まっていて、匠と柊くんの姿もあった。



「とりあえず、今は応援だね!」


「うん!」



気になることは後回し。
今日は前回みたいに考え事はしないで、匠の活躍を見守る。そして「ナイスピッチング」って心から言ってあげるんだ。