何日かして橘さんは大発見でもしたみたいに言った。

「俺は悟った。真野は猫なんだ。」

「はぁ。猫、ですか。」

「あぁ。猫。
 構うと逃げるけど知らんぷりしてると寄ってくる。」

「ふふっ。橘さんが「知らんぷり」って言うと可愛いです。」

 無言の抵抗に「俺に可愛いって言う?」という訴えを感じて余計にフフッと笑う。

「ほら。そういうとこ。
 読めない会話のキャッチボール。」

「コミニケーション障害の自覚もあります。」

「自慢そうに言うな。」

 ぶっきらぼうに言われてもそこに確かに愛情みたいなものを感じて、もう恐いとは思わない。

「自慢じゃなくて事実です。」

「もういい。」

 そして橘さんは案外、すぐ拗ねる。

 そこがちょっと面倒くさいかもって言ったら面倒くさがりは俺の方!と何故だか憤慨された。

 そんな風に戯れあって過ごす僅かな平日の時間はあっという間に過ぎてしまった。