溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

「聞いてなかったんだね」


私の表情で察したらしく、穂積課長が苦笑した。
それがいつも見ている顔だと理解した瞬間、ホッとしている私がいることに気づく。


「やっぱり、君はもう少し危機感を持った方がいい。隙だらけだよ」

「大丈夫ですよ。私みたいな女は、そういう対象にも恋愛対象にもなりませんから」


諭すような声音に、半ばヤケで返した。
ただの親切として笑って受け取っておけばよかったのに、お酒の力で気が大きくなったのか、可愛げのない返事をしてしまったのだ。


「どうしてそんなことが言い切れるの？」


だけど、穂積課長は私の言い方に対しては特になにも気にしていないのか、紡いだ言葉の理由に対して不思議そうな顔をしているようだった。


一瞬考えて口を開き、やっぱり上司に話すのは憚られてまたすぐに唇を閉じる。


それなのに、課長があまりにも優しく破顔していたから、ついうっかり口を滑らせてしまった。