溺愛誓約〜意地悪なカレの愛し方〜【コミカライズ配信中】

「もしかして、怒ってますか?」


穂積課長のさっきの返事だけでは、よくわからなかった。
だから、思い切って控えめに核心に触れてみたのに、課長から返されたのは笑顔だった。


「どうしてそう思うの?」


いつもと変わらない、柔らかい笑み。
それなのに、ちっとも癒されないのは、思っているよりも緊張しているからだろうか。


「いえ、なんとなく……」


癒されないから、なんて言えるはずがなくて濁してしまうと、フッと笑われた。


「別に、怒ってたわけじゃないよ。ただ、ちょっと心外だな、とは思ったけど」


心外という言葉に、ドキリとした。
怒ってはいなくても、私の発言でそう思わせたということは間違いないのだから。


ただ、心当たりがなかった。
さっきまでふたりのやり取りを見ていて、そのあとは店長さんの軽口に返事をしたくらいで、穂積課長のことを悪く言ったりはしていない。


この短時間で必死に思考を働かせていると、課長がため息混じりに苦笑した。