「あ、あの……莉緒ちゃ――青山さん、部長のことを心配していました」

「……そう」


一通りの話が終わると、二宮はそう切り出した。
咄嗟に笑顔を繕ったが、『莉緒ちゃん』と呼びかけたことに顔が引き攣りそうになる。


「もしなにかあれば、俺はいつでも相談に乗るつもりです。あと――」


俺を真っ直ぐ見つめている顔が、僅かに強張る。
明らかに仕事の話ではないことを察し、俺は彼に真剣な眼差しを返した。


「彼女のこと、絶対に泣かせないでください。すごく繊細な子だと思うので……。もし、莉緒ちゃんが泣くようなことがあれば、俺は部長から彼女を奪うかもしれません」


思わぬ宣戦布告に、一瞬だけ目を見開いた。
二宮の莉緒への視線に気づいていなかったわけではないが、彼の性格を考えればこんなことを言うとは思わなかったからだ。


「……なるほど。そう来るか」


冷静を保っていたのは見かけだけで、内心ではそれなりに焦っていた。
こんな感情を抱いたのは、二宮の性格も彼の仕事ぶりもよく知っているからだ。