二宮の名前まで出てきたのは、予想外だった。
確かに、同期の三人は何度か一緒に飲んでいたようだが、彼に対して莉緒がそこまで信頼を置いているとは知らなかったからだ。


それでも、莉緒がそう言うのならば……と承諾した。
俺が知る限り、秘書課で優秀だと評判の山口はもちろん、二宮も信頼できる人間だから、ふたりなら大丈夫だろうと思えた。


「恐らくそう遠くないうちに、俺は営業部を離れると思う。そのときに、信頼できる部下に自分が抱える顧客を任せたい。そして、それは二宮くんが適任だと思ってる」

「部長……」

「頼まれてくれないか?」


真っ直ぐな視線を向ければ、彼はグッとこぶしを握った。


「もちろんです。部長の期待に応えられるよう、全力で頑張ります!」


そう言った彼は、真剣な顔つきになっていた。
意を決したような面持ちからは、困惑が消えている。


「じゃあ、来期に向けて少しずつ引き継ぎをしていこう。いずれ、一緒に挨拶回りもしてもらうから」


二宮は、俺を見つめたまま頷いた。
なにも心配はしていなかったが、俺の話に真剣に聞き入る姿を見ていると、改めて信頼の置ける人間だと感じた。