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九月はもう終わるというのに、今夜は暑いくらいでまだ夏の名残をしっかりと感じる。
上京したての頃は東京の九月はもっと秋らしいのかと思っていたけれど、年々夏が長くなっていっているような気がする。
金曜日の夜の街はこれから飲みに行くであろう人たちの姿が目につき、そのせいなのか不意に孤独な気持ちが芽生えて少しだけしんみりしてしまった。
こういう日は、ひとりでいるのが苦手。
たいして広くない部屋だけれど、こんな気持ちで誰もいない家に帰った時は寂しさをひしひしと感じて、大体ロクなことしか考えなくなってしまうから。
ひとりで飲みに行くことは滅多にないけれど、このまま帰るくらいなら飲みに行く方がいい。
前に多恵と行ったお店はひとりでも居心地がよさそうだと思ったことを思い出し、悩んだあとで踵を返した。
三十メートルほど戻ってから大通りから逸れるようにして路地に入り、小さなカフェバーや居酒屋が立ち並ぶ道を進んだ。



