「でも、今でそんなに忙しいなら、来月はもっと大変なんじゃない?」

「そうだよね……」


穂積課長にプレゼントしてもらったネックレスに触れながら、思わず大きなため息が漏れた。
わかっているとはいえ、この状態がまだ続くのかと思うと気が重い。


「いっそのこと、金曜の夜とかに押しかけてみたら?」

「困らせたくないもん」


私の答えに、多恵が「まぁそう考えちゃうよね」と苦笑する。
合鍵をもらったものの、課長の忙しさを目の当たりにしているからこそ、まだ一度も使ったことはない。


穂積課長は『寂しいって言っていい』と伝えてくれたけれど、やっぱり言いづらかった。
連絡だって、課長からくる電話やメッセージに応えることしかできていない。


会えばたくさん甘やかしてくれるし、私のことを想ってくれているのも伝わってくる。
そんな優しい恋人が大変なときにこれ以上のことを望むのは、ただのわがままのように思えるし、なによりも負担をかけてしまうことをわかっているから、どうしても気が引けた。