ようやく唇が解放された時には、全身が熱を帯びていた。
思うようにできなかった呼吸は乱れ、足りなかった酸素を求めるように肩が上下する。


「ここがいい? それとも、ベッドに行く?」


このあとどうするのかを暗に告げられて、私を見つめる視線から逃げてしまう。
だけど、たいして待ってもらえないことは予測できるから、少しだけ悩んだ末に口を開いた。


「あの、先にシャワーを……」

「ダメ」

「で、でも、私……さっきまで居酒屋にいたし、それに……汗とか……」


語尾が小さくなっていくのを自覚しながら、恐る恐る顔を上げる。
すると、熱っぽい瞳が私を捕らえていた。


「悪いけど、もう待つ気はないから。文句があるなら、俺を煽った自分自身に言うんだな」

「……っ」


焦れたように、眉を寄せられる。
その扇情的な面差しを前に、思わず息を呑んだ。


静かな部屋に、喉が小さく鳴った音が響いた。
刹那、驚く暇もないくらい性急に抱きかかえられ、そのままお姫様抱っこで寝室に連れ込まれてしまった。