「……本当にいいんですか?」

「なにが?」

「私、付き合う前後で、イメージが全然違うらしいですよ。誰とも恋愛が長続きしたことないですし、なにもかもが普通ですし、いつも振られちゃうような奴なんですよ……」


本当にいいんですか、ともう一度紡ごうとした瞬間、穂積課長によって顎を掬われた。
刹那、お互いの視線がぶつかり、惹きつけられるように絡んでいく。


「そんなの、最初にキスした帰りにもう聞いたよ」

「え?」

「莉緒の過去がどうであっても、俺とそうなるとは限らないんだ。だから、そんなことはどうでもいい。それより……」


私が記憶を手繰る間もなくきっぱりと言い切った課長が、ゆっくりと顔を近づけてくる。
鼻先が触れるほどの近さに息が止まりそうになった時、真っ直ぐな瞳に射貫かれた。


「できれば、そろそろ素直に堕ちてくれないか」


低く甘やかな声で囁かれた台詞に、きっと呼吸は止まっていた。
鼓動が大きく跳ね上がり、思考も停止した私の唇は、いとも簡単に奪われてしまった。