身をよじろうとしているのに動けないことにも、穂積課長がなにも言ってくれないことにも、戸惑いを隠せなくて。
課長の体温と力強い腕に心が掻き乱されて、翻弄されてしまいそうになる。


「ほらな」

「え?」

「こんな風にされたら、身動きだってまともに取れないんだ」


ゆっくりと体が離され、顔を上げた私と穂積課長の視線が交わった時、課長の手によって顎を掬われた。
再び心臓が跳ね、頬の熱がさらに高くなる。


それを自覚した直後、端正な顔がやけにゆっくりと近づいてきた。


唇にキスを落とされたのは、たぶん数秒が経った頃のこと。
重なった温もりにまた鼓動が大きく跳ね上がって、胸の奥が甘く締めつけられる。


チュッとリップ音を立てて離れた唇は、すぐにまた私の唇を奪い、叱責するかのように強く食んで、角度を変えては何度もそれを繰り返す。

濡れた音が深夜の空気を巻き込んで、ふたりきりの廊下が艶かしい雰囲気を纏った。