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楽しい時間を満喫したおかげで帰路を辿る足取りはとても軽く、駅からアパートまではあっという間に思えた。
ふたりと飲んだあとはいつもこんな感じで、多少の嫌なことなら忘れさせてくれる。
だけど……。
ふと、穂積課長のことを思い出してしまって、胸の奥がモヤモヤとした。
あれから、課長とは話せていない。
社内で顔を合わせることがほとんどなかったし、なぜか連絡もないから。
『お前に女としての喜びを教えてやる』
なによ、あんなこと言っておいて……! 電話どころかメッセージもくれないんじゃない……。
心の中で呟いた声が、モヤモヤとした感情を不満に変えていく。
眉を寄せてしまったあとで無意識のうちに尖っていた唇に気づいて、それを誤魔化すように息を吐いた。
課長は本当にどういうつもりなのかな?
私たちって、一応付き合ってる……んだよね? でも、今週に入ってからは全然連絡がないし……。



