「疲れた顔してるね」

「うーん、さすがにちょっとね」


多恵に眉を寄せて微笑み、「げっそりしてるかな?」と訊けば、彼女も苦笑を浮かべた。


「げっそりっていうか、寝不足っぽいように見えるよ」

「今日は午前中はずっと入力作業ばかりだったから。今は頭の中で数字が踊ってるよ。午後は数字なんて見たくない……」

「納期前なんだから無理でしょ」

「そんな冷たいこと言わないで!」


温かいおしぼりを握りながら眉を下げると、多恵はますます呆れたように笑ったけれど……。
そのあとでちゃんと、「莉緒はよくがんばってるよ」と優しい笑顔でフォローを入れてくれた。


例え、その場しのぎのお世辞だったとしても、彼女に褒めてもらえると落ち込みがちな気持ちも少しだけ前向きになれる。


「ほら、とりあえず食べようよ」

「うん」

「今日も美味しそうだねー」

「もうお腹ペコペコ!」


程なくして運ばれてきたランチプレートには数種類のおかずが乗っていて、今日も安定の美味しさを期待できそうだ。
ふたりで手を合わせて声を揃え、フォークを手にした。