俺は叶花のいる場所に移動し、後ろから声をかける。



「叶花」


「あ、蓮くん! どうしたの?」



なにごともなかったかのような、いつもの笑顔に、なんだか気が抜ける。



俺は叶花の横にパイプ椅子を置き、座った。



「蓮くん、はちまきはネクタイじゃないよ?」



叶花はそう言いながら、俺の首にかかっていた青のはちまきを取った。


そして立ち上がって、俺の頭に巻き始めた。



「なあ、叶花」


「んん!? 蓮くんが私に用事があるなんて、珍しいね!?」



後ろから聞こえてくる叶花の声に、思わず笑みがこぼれる。



「叶花は、誰が好きとか、そういうのがわからないんだろ」



すると、さっきの騒がしさはどこに行ったのか、返事が返ってこない。


叶花は黙って椅子に戻り、足を遊ばせた。



「それに迷って、悩んで、俺のクラスに来なくなった……だろ?」



叶花はゆっくりと顔をこっちに向け、微笑んだ。