「無関係な話をするより、読書のほうがとても有意義なんだけど」
これは後輩からすれば、腹の立つことだろう。
あんなふうに言ってきたくせに、と。
「まあまあ。部員同士の仲を深めるのも、大切なことだから」
先輩が仲介役となり、二人の間に入る。
「雨宮先輩、ちょっといい?」
後輩とは話が合わないと踏んだのか、叶花は先輩と廊下に出た。
休んでた理由を話しに行ったな。
「なんなの、あの人……」
後輩は閉められたドアに向かって呟いた。
俺もよく思う。
そして後輩は本を読み始めた。
俺と彼女がページをめくる音だけが、部屋に響く。
外からは吹奏楽部の練習音や、放送部の発声練習、運動部の掛け声……
部活を勤しむ、多くの音が聞こえてくる。
この空間、悪くない。
「ただいまー!」
すると、思いっきり空気を壊すやつが帰ってきた。
話したいことをすべて話したのか、スッキリした顔をしている。