明るく迎えてくれたと思った瞬間、そう言ってきた。
俺が新入生じゃないってのは、スリッパか学年章の色でわかる。
だが、叶花は無理だ。
叶花のスリッパも学年章も、新入生の色。
それなのにわかったということは。
「私のこと、覚えてるの?」
たった一ヶ月しか通っていなかった叶花のことを、覚えている人がいるとは。
それもピンポイントに、ここで見つかるとは。
「やっぱり。櫻木さん、だよね? 俺、雨宮修一。覚えてるかな?」
彼の名前に聞き覚えがあるのか、叶花は手を叩き、興奮気味に俺のほうを見てきた。
「雨宮くん! あのね、蓮くん! 雨宮くんね、私の隣の席だったの!」
叫ばなくても聞こえる。
「君がレンくんか。櫻木さんが嬉しそうに、君のことを話していたよ」
先輩は穏やかに笑った。
正直、もっと動揺するかと……
てか、学校で俺の話って、なにを話したんだ。
「……そうですか」
なんだか不信になり、そう言うしかなかった。
さて、変に気まずい空気が流れ出した。
動揺を見せていないが、内心は大変なことになってるだろう。
「あのね、雨宮くん。私が本当は雨宮くんと同い年だって、あんまり言いふらさないでね」
すると、叶花が真っ先に右手の人差し指を口に当て、言った。



