叶花は微笑むけれど、それは涙を増やすだけだった。
それから一人ずつ叶花と言葉を交わした。
みんな気を使ったのか、俺を一番最後にしてくれた。
「……蓮くん。蓮くん、蓮くん」
叶花はただ、俺の名前を連呼した。
「……そんな呼ばなくても聞こえる」
俺はなんとか涙を堪える。
そんな俺を見てか、叶花はゆっくりと笑顔を作った。
「蓮くんは、一人じゃない。だから、大丈夫」
叶花は俺の手をしっかりと握り、言い切った。
我慢してたはずの涙は、結局頬を伝った。
「蓮くん、泣き虫さんだー……」
その言葉と同時に、俺の手を掴む力が、一気に抜けた。
そして、病室に機械音が鳴り響く。
「叶花……?」
俺は逆に叶花の手を握った。
「叶花!」
どれだけ呼びかけたって、叶花は目を覚まさない。
すると、俺の肩に手が置かれた。
それは、須藤さんのものだった。
須藤さんは涙を拭いながら、首を横に振った。