これには俺もこっこも驚いた。
「ちょっと、なにするんですか!」
こっこは必死に抵抗してきた。
だけど、俺は離そうと思わなかった。
離したらいけないような気がした。
そのうちこっこは諦めたのか、大人しくなった。
伝えたいことを言うなら、今だ。
「無理して笑う必要はない。そのほうが、叶花が辛くなるから。そのままのこっこでいたらいい」
俺がそう言うと、こっこはさらに涙を流した。
俺はこっこが落ち着くまで、こっこに胸を貸していた。
「……今日のこと、誰にも言わないでくださいね」
ようやく涙が止まったこっこは、俺から離れるて鼻を啜りながら言った。
「言わない。そっちこそ、俺に抱きしめられたとか言うなよ」
「言いませんよ」
こうして俺はこっこを送り届け、自分の家に帰った。
しかしこんな穏やかな日は、そう長くは続かなかった。
終わりというのは、突如訪れるもの。
一週間後。
叶花が、危篤状態になった。



