そう答えたら、こっこは俺を羨ましそうな目で見てきた。
「……なんだよ」
すると、こっこはそっぽを向いて、俺の前を歩き出した。
「人前で泣くって、その人に気を許してるってことになるじゃないですか。でも、さくらは私の前で泣いてくれない。私は、さくらと仲良くなってると思うのに……」
そういうことか。
当然だが、こっこなりに悩んでたんだな。
「叶花にその考えは当てはまらないぞ」
俺らしくもなく、こっこを励ますために言った。
そのせいか、立ち止まって振り向いたこっこは目を見開いていた。
「叶花は、誰かに心配されるのが苦手なんだ。気を使われたりするのも。そんなことより、みんなで笑う空間が好きなんだ。だから、誰の前でも泣かない」
こっこに追いつき、俺はこっこの顔を覗き込む。
こっこは静かに泣いていた。
「私、ずっと笑ってられる自信がない……」
そう言ったこっこを、俺は抱きしめた。



