叶花の体調が、回復も悪化もしないまま十月中旬になった。
朝は冷え込むから学ランが必要になってきたし、日が落ちるのが本格的に早くなってきた。
そのせいで、早めに病院を出なきゃならなくなっていた。
だが、中間試験の今、俺とこっこは半日を病院で過ごしていた。
俺たちは他愛もない会話を中心に、叶花との残された時間を送っていた。
「こっこ、勉強は大丈夫?」
さすがに話題が尽きたってときに、叶花がゆったりとした声で言った。
「先輩には言わないの?」
「蓮くんは、天才くんなの」
弱った声でも、言葉は叶花が言ってるなと、わかるようなことだった。
……誰が天才だ、誰が。
「ちなみに順位は」
こっこは目を細めている。
……怒らせたのか。
「……一桁」
「滅べばいい」
過激だな、おい。
「こっこだって、そんなに悪くないだろ」
「普通ですよ」
その普通が人によって違うんだが。