翔太さんはもういないわけで、極端な話、叶花を悲しませたとしてもなんの問題もない。
叶花のお見舞いにだって、来なくてもいい。
それでもそうしないのは、翔太さんの恐ろしさ……的なものを知ってるから。
俺には父親がいなかったから、翔太さんが俺の父親代わりになってて、怒られることも何回かあった。
そのたびに怯えていた経験が、今に繋がっている。
どこかで見張られているような感覚。
本当に、恐ろしい人だ。
そうこうするうちに、病室に到着した。
「蓮くん! お兄ちゃん! おはよう!」
部屋のドアを開けた瞬間、元気よく迎えてくれた叶花。
髪型はあのころみたいなツインテールにはしてないけど、勢いは変わらず。
というか、増してる。
「おはよう、叶花ちゃん」
結斗さんは挨拶を返しながら、俺は黙って部屋に入る。
「蓮くん、おはよう」
俺が挨拶を返さなかったから、叶花は俺の目を見て言ってきた。